2016年12月冬・編集発行・野尻湖フォーラム

「国立公園 野尻湖」の視点でみる野尻湖

環境省長野自然環境事務所 戸隠自然保護官事務所
自然保護官 梅田実生子, 自然保護補佐官 前田久美子

「アメリカ合衆国と日本の国立公園」

 世界で初めて国立公園を作ったのはアメリカ合衆国で、1872年にイエローストーン国立公園が指定されました。その後、世界各国に国立公園制度が広まり、日本でもアメリカの制度を手本として準備を進め、1934年に初めて瀬戸内海、雲仙及び霧島の3つの国立公園が指定されました。

 ここで、アメリカと日本の国立公園について比較してみましょう。

 最大の違いは、土地所有者が国かそうでないかということです。アメリカやスイスの国立公園は「営造物型自然公園」とよばれ、国立公園の土地を管理者である国が所有しています。国が土地を所有しているため、厳しい規制をかけることができ、アメリカのレンジャーは逮捕権を持っており、植物の盗掘や密漁を行う者を直接逮捕できます。アメリカは広い国土を活かした制度を作り、「国立公園」がブランドとして確立されていると言えます。

 対して、日本やイギリスは「地域制自然公園」とよばれ、公園管理者である国が持っている土地は少なく、その半分ほどが私有地です。このため、日本では土地所有者や地域社会の合意を得て自然や景観の保全を行う必要があります。

 日本では、狭い国土に大勢の人が住み、山の奥地まで土地をきめ細かく利用してきました。広い国土を持つアメリカとは異なり、国立公園の土地すべてを公園専用とすることはできません。しかし、昔から自然と共に生きる日本人が作り出した日本固有の景観が数多く存在します。里山景観や神社の社叢林など、文化的側面が強い地域も国立公園に指定されています。

 日本の制度がアメリカの制度に劣っているというわけではなく、日本の自然の特徴や土地所有等の状況に応じた国立公園制度を導入し、美しい景観を守り利用しようとしています。

 


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