2016年12月冬・編集発行・野尻湖フォーラム

中村家住宅の鍛冶資料の特徴

沼津市歴史民俗資料館 小松大介

 信濃町と言えば全国的にも有名な鎌の産地です。たくさんの鍛冶屋がいましたが、多くの鍛冶屋は鎌の製造に特化した鍛冶屋です。信濃町では鎌鍛冶と呼ばれています。一方、中村家は鎌ももちろん製造しますが、鍬やマサカリなど鉄から作られるあらゆる道具を製造しています。時には、鉄道で必要になったナットや土蔵の錠前なども注文されて作っていたようです。鎌のような特定の物以外でも頼まれれば何でも製造する鍛冶屋のことを信濃町では野鍛冶、もしくは農鍛冶と呼んでいます。

3.中村家の鍛冶資料調査

 中村家の鍛冶場には当時使われていた道具や材料といった鍛冶に関する資料が1,158件残されていました。1軒の鍛冶屋で使われていた道具がほとんど欠けることなく残されている全国的に見ても非常に貴重な資料であると言えます。この中には、鍛冶とは関係ない資料などが含まれていたため、調査し精査した上で選別を行い、733点の資料目録を作成しました。

 このような人々が使用してきた道具を始めとするモノを調査研究する学問のことを民具学と言います。民具調査では寸法や重量や文字情報を調べて記録することはもちろんですが、実際にモノを使用してきた人からお話を聞いて来歴や使用方法や技術を資料カードという1枚のカードに1件ずつ記録していきます。モノにまつわる思い出も貴重な情報となります。

4.中村家の鍛冶資料

 これまで述べてきた通り、中村家は1.動力ハンマーを使わないため、親方の他に先手が必要となり、その先手の中心となっているのが妻である点、2.信濃町では一般的な鎌に特化した鍛冶屋ではなくあらゆる鉄製品を製造する野鍛冶である点の2点が大きな特徴として挙げることができます。中村家の鍛冶資料の中からこの2点の特徴がわかるような資料を紹介します。⟩⟩⟩

 

 


文頭へ前へ次へ