2016年12月冬・編集発行・野尻湖フォーラム

中村家住宅の鍛冶資料の特徴

沼津市歴史民俗資料館 小松大介

 同じものがたくさん注文された場合や何度も繰り返し注文が来る場合に鉄で型を作っておき、これを参考にしながら製造していきます。型を作っておくことで一から形を考えながら作る手間を省くことができます。中村家の鍛冶資料には様々な型が残されています。当然ながら鎌の型も多く見ることができますが、除草の時に使用する草掻きや鉈(なた)の型なども見ることができます。鍬の刃に柄を挿し込む筒のことをシツと言いますが、この型も見ることができ野鍛冶らしい資料と言えるでしょう。

5.おわりに

 今回「信濃町の野鍛冶住宅(旧中村家)及び野鍛冶資料」が長野県指定民俗文化財として登録されたことで、"中村家"の鍛冶資料に関する調査はひと段落したところです。しかし、信濃町における鍛冶文化を後世に遺すためにやらなければならないことはたくさん残されていると思っています。中村家は鎌の製造も行っていましたが、野鍛冶であるという点では信濃町においては特異な存在です。信濃町では一般的な鍛冶屋である鎌鍛冶の資料の収集や調査が必要だと思います。これを行うことで野鍛冶と鎌鍛冶の比較を行うことが可能となり、今回調査を行った中村家の鍛冶資料も活きてくるでしょう。また、鎌鍛冶が鍛えた鎌を販売する問屋、鎌に柄をすげる棒屋、柄となる木材を切りだす杣(そま)、火床で火を起こすための燃料となる炭を焼く炭焼きなど、信濃町における鍛冶を支えてきた諸産業もまだ調査可能な状態です。これらを調査していけば、歴史・経済・文化など多方面から分析していくことが可能となり、国指定重要有形民俗文化財などさらに上の次元へと進むことができるのではないかと思います。

 最後になりますが、今回の調査では信州「むらのかじや」友の会の皆様や野尻湖ナウマンゾウ博物館の渡辺哲也さんなど多くの方のご協力を頂きました。心よりお礼申し上げます。長時間に及ぶ鍛冶資料の聞き書き調査にお付き合い頂きました故・中村稔さんに深く感謝申し上げるとともに、衷心よりご冥福をお祈り申し上げます。⟩⟩⟩

 


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