2017年12月冬・編集発行・野尻湖フォーラム

電報閑話

文と写真 小林力

「あんちゃあ、ノケマの水飲みたい」
と言いました。

「ノケマの水」とは、生まれ在所の山裾に湧き出す清水のこと。一年中手が切れるほどに冷たく、村内の田んぼ一面に行き渡る豊富な湧き水の淵の名前です。子供の頃、野山を駆け回って遊び、家の手伝いに汗した頃、その淵に両の頬まで浸けて湧き水を飲み、喉を潤した思い出の水のことです。兄はノケマの水を持ってくるように家に電報を打ちました。今はどんな容器でもありますが、当時のこと、おそらく何かで手に入れた一升瓶にノケマの水を汲み、汽車に乗ったのでしょう。 ⟩⟩⟩

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ノケマの水が湧き出す山裾の淵

 


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