2018年7月夏・編集発行・野尻湖フォーラム

野尻湖ナウマンゾウ博物館リニューアル
人々が集う地域拠点としての博物館を目指して


リニューアルまで、そしてこれから

野尻湖ナウマンゾウ博物館 学芸員 渡辺哲也

 野尻湖ナウマンゾウ博物館がリニューアルオープンして3ヶ月が経過しましたが、来館者の反応から判断して、リニューアル部分については概ね好評いただけているように感じています。特に体験ミュージアムは好評で、滞在時間の半分以上をここで過ごす方も多く見られます。

 今、振り返れば、よくここまでできたものだと、自分のことながら感慨深くなってしまいます。昨年5月の悪夢のようなできごと。国からの「地方創生拠点整備交付金」の交付が決定して改修工事が進む中、内部の展示や備品の購入は「地方創生推進交付金」の交付を見込んで進めていました。しかし、この交付金が不採択となったのです。

2,800万円の事業費が0円に。目の前が真っ暗になりました。その後の信濃町役場内の話し合いで、町から860万円ほどの予算を付けてもらうことができ、計画の練り直しとなりました。予算が少ないために展示業者に設計を委託することもできず、展示品の一括発注もできない状況で、我々学芸員が簡単に描いたスケッチをもとに展示品を個別に発注することになり、発注先とのやり取りも、事務量もどんどんと増加していきました。

 しかし、こうした困難な状況になると、なぜか不思議と救世主が現れたり良いアイデアが浮かんだりするものなのですね。1つ目は改修工事の設計を請け負ったM設計事務所の担当者がM橋さんであったこと。この方は善光寺周辺の古い建物をカフェにすることなどに携わり、リノベーションのノウハウをよくご存じで、こういうことが大好きな方だったのです。出費を抑えるため、旧野尻湖小学校図書室の本棚を生かすことなどを提案してくれたり、カフェやショップの家具を安価につくる方法を提案してくれたりと、たいへんな協力をしてくれました。また、カフェの壁画を描いてくれた真子さんを紹介してくれたのもM橋さんでした。

 2つ目は松田朕佳さんとの出会い。たまたま化石レプリカづくりのワークショップに来てくれた松田さんが、たいへんな才能をお持ちの方だったということです。展示業者に依頼すればすぐに何十万円と言われてしまう絵を、こちらが提示した低い金額で引き受けてくれ、私たちの説明を聞きながら何度も何度も描き直し、短時間のうちにこちらが納得できる絵に仕上げてくれました。リニューアルで新しく加わった展示にはとても満足していますが、松田さんとの出会いがなければこの展示にならなかったと思うと、大げさかもしれませんが、奇跡的なことのように思えてくるのです。

 ここでは書ききれませんが、ほかにも多くのみなさんの助けを借りて、今回のリニューアルになりました。交付金が採択されていれば、博物館職員と展示業者とのやり取りだけでつくられたであろう展示を、図らずも、多くの方の協力を得て、「地域と協働」してつくりあげることができました。できあがった中身は、確かにお金はかかっていませんが、他にはない独創性のある展示で、来館者の心をつかむものになっているものと自負しています。

 さて、今後ですが、「地域と協働する博物館活動」は継続しておこなっていく予定です。今年度も文化庁の補助金を活用して「野尻湖周辺を活性化する博物館活動事業」を展開します。文化庁の補助事業も対象事業の見直しがおこなわれ、インバウンド関係で申請した博物館展示室の英文表記、英文表示の映像制作、案内看板の英文表示などが不採択となりました。採択されたのは(1)氷河時代案内人(地域学芸員)育成事業と(2)地域と共働による周辺地域活性化事業の2つです。(1)では養成講座と講演会をおこない、博物館を支えてくれる方を増やそうという取り組みで、(2)では野尻湖周辺に置かれたモニュメントを紹介するガイドマップを製作するといった内容となっています。

 生まれ変わった博物館を拠点に、これからも地域に根ざした博物館活動をおこなっていきたいと思っておりますので、ご支援、ご協力をどうぞよろしくお願いします。

 


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