外来魚の再放流禁止 決まる
長野県内水面漁場管理委員会(沖野外輝夫会長)では、平成20年2月13日開催の第197回会議において、ブラックバス等外来魚の再放流禁止の指示を決定し、県は3月21日この委員会指示を告示した。施行は6月1日からですでに始まっているが、野尻湖・木崎湖は12月1日からとなっており、この間に解除申請があり、逸出防止策が採られ、委員会で認められれば禁止の解除ができるという。
5年ほど前の平成15年4月に当時の内水面委員会(俣野敏子会長)が再放流禁止の指示を決定したが、田中前知事より時期尚早との意見があり、同委員会では実施を延期した経緯がある。その間に外来生物法が施行されたこともあり、この外来魚問題、再検討の方針で平成17年12月より沖野外輝夫会長による新委員会で審議されることとなった。
平成18年度に専門の小委員会が設けられ、この小委員会では、再放流全面禁止と一部除外しながら再放流禁止を進めるという2案併記の回答が出された。それを受けて12月の第196回会議において審議をし、全面禁止にすべきという意見、観光資源となっている湖もあり、一部除外してもよいという意見、再放流禁止自体の効果を疑問視する意見など各委員から多くの意見が出されたが、条件付きの再放流禁止の指示を出す方向で決まった。
本会議で出た主だった意見として、
- 再放流禁止によって、外来魚が1匹でも減るならやる価値はある。
- 長野県全湖沼で一斉にやるべき。例外が認められれば、そこから拡散の可能性もある。
- 棲み分け(ゾーニング)で地域を重視していくべき。
- 外来生物法と再放流禁止とは違う。拡散防止の啓蒙は外来生物法で十分。再放流禁止の意味が見出せない。
- 生きたままの持ち出し禁止はすでに当たり前のこととして言われているが、守られていない。釣り人のモラルに期待できない。
- 河川への流出は問題。観光が重要であるならなぜ流出防止策を確実にしないのか。漁業権魚種でない外来魚から収入があるのなら、流出防止は漁協が例を作るべき。
- 流出防止策が完全と認められれば例外許可もありだが、本来全面禁止すべき。
- 本来、釣った魚の再放流は釣り人の自由であるべき。拡散防止策を見極めた上で再放流禁止を決めるべき。しかし防止できないのであれば、再放流禁止になっても仕方のない魚種だ。
- 駆除してきたところも利用してきたところも一定期間を置き、再放流禁止の効果を見た上で検討すべき。
翌2月の第197回会議において、解除申請の判断基準、施行日、付帯事項などが審議され、委員会の指示が決定された。
解除申請がなされた場合の審査基準は、
- 当該水域と接続する水路(流出水路に限る)との接続部に、オオクチバス・コクチバス・ブルーギルが容易に逸出できない構造の網が三重に施してあること。ただし、当該水路又は当該水路と当該水域の接続部に、網に代わる十分な逸出防止措置が講じられている場合は、この限りでない。
これは漁業権を持つ河口湖など4湖の環境省基準に準ずるもので、逸出の効果が疑問視される声もあったが、とりあえずはこれで審査して、状況を見ることになった。
施行日については、一般は6月1日、再放流禁止に反対の要望が出されていた野尻湖・木崎湖においては12月1日から実施ということで決定した。それまでに上記2湖沼は拡散防止策をとって解除申請することになる。
この内水面漁業管理委員会の委員になっている前野尻湖漁協組合長(3月で組合長退任)から出された主な意見は、
- 野尻湖の河川への流出は東北電力が取水する時だけであり、自然流出はない。防御網等の設置は漁協だけで勝手にやるわけにはいかない。会社との交渉の設定を県に協力してもらいたい。
- 電力会社との交渉には時間がかかる。3〜5年の時間的猶予がほしい。12月1日という期限が書かれてしまうと釣り客に誤解を与える可能性がある。期限を「当面の間」として、しばらくはゾーニングを認めてもらいたい。
- 駆除は考えていない。委員会で、魚類の生息数や関係など先に調査してほしい。
- 一般観光客減少の中で、バス釣りが観光資源として大きなものとなっている。野尻湖周辺の観光業から非常に喜ばれている。バス釣りにより年間3〜5億円のお金が落ちている。バス釣りによる収入がなくなると途方にくれる人がでてくる。
- 広く、深い湖なので駆除は無理である。経済的にも不可能だ。駆除しろというのであれば、県で費用を取ってもらいたい。
などであった。野尻湖漁協は11月までに解除申請を出すことを4月開催の総会で報告した。現在は東北電力が設置した25ミリスクリーンが水路口にあるのみ、ということである。
長野県内水面漁場管理委員会指示第8号
漁業法(昭和24年法律第267号)第67条第1項及び第130条第4項の規定により、水産動植物の繁殖保護を図るため、次のとおり指示しました。
平成20年3月21日
長野県内水面漁場管理委員会会長
沖野 外輝夫
平成20年6月1日以降(野尻湖、木崎湖にあっては平成20年12月1日以降)、オオクチバス、コクチバス又はブルーギルを採捕した者は、採捕した河川、湖沼又はその連続する水域にこれを再び放してはならない。ただし、試験研究による再放流で、かつ、長野県内水面漁場管理委員会(以下「委員会」という。)が認めた場合、又は漁業権者からの解除申請があり逸出防止策が講じられていると委員会が認めた場合は、この限りでない。
野尻湖は実際に漁で生計を立てている家がない、観光漁業がメインであるというのが、再放流禁止に足並みを揃えられない大きな要因となっていると考えられる。長野県の他湖沼が再放流禁止によって1匹でも減らそうとしている中で、バス釣りで商売をしたいと言うのであれば、下流河川、湖沼に絶対に迷惑をかけないという意気をもって、東北電力との交渉も含め、万全な対策を講じて流出させない努力をすべきと考える。(文責 編集部)
【参考資料】
長野県HPより
「長野県内水面漁業管理委員会議事録」