2008年7月夏・編集発行・野尻湖フォーラム

野尻湖は誰のもの?


 野尻湖は誰のものか、と考えた時に、まず真っ先に、国のものというのが一般的な答えだろうか。

 野尻湖は上信越高原国立公園内にあり、標高654m、周囲16km、面積4.56km2、平均水深21mで、長野県一の貯水量を誇る関川水系の一級河川である。この水の利用に関しては、新潟県頚城平野の灌漑用水として、江戸時代より320年来の慣行水利権を持つ中江土地改良区(平成18年合併により関川土地改良区)と日本初の揚水発電所である池尻川発電所の東北電力、野尻地区の田を灌漑する御小屋、小丸山用水の野尻土地改良区の3つが今、権利を持っている。昭和20年より50年間取水してきた長野市水道局は、平成17年8月で取水を取りやめた。

 野尻湖に流入する河川は、菅川、城帰り川、市川、宮沢川、伝九郎用水路、古海川引水路、発電用揚水路など用水路も含めて11ヵ所で、流出は水戸口水門のみである。昭和19年に河水統制事業(戦時中の特例)により、電力増強、食糧増産、水道水供給を目的とした国策事業として、流域の異なる鳥居川の水を導入してこれらの増強を図った。取水、導水に関係する用水組合は数多い。

 では、湖の利用に関してはどうだろう。漁業権を持つ野尻湖漁協、桟橋(公共・個人)の権利は自然公園法、河川法に準拠する必要があるが、無許可の桟橋も多く存在する。野尻湖に対する利権はいったいどの程度あるのだろうか。遊覧船航行は? ボートは? 弁天島は? 利権に関わらず、湖を利用し、地域で生活していく上での法的な規制は多くある。詳しく調べてみて、いずれ本紙でご報告したい。

 ともあれ、国土交通省直轄の一級河川である野尻湖は国のもの、ということは、国民皆のものには間違いない。

【参考文献】
 関川土地改良区「農業用水と水利権」
 野尻湖検討委員会「答申書」と資料

 

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